あお

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 もし君が、一途だったら。なんて、意味のない考えが過る。
「ねぇ。私たちって、どんな関係だと思う?」
「チョコレート」
「は?」
 意味がわからないと言いたげな幼馴染み。しかし、俺から詳しく説明する気もない。
 彼女から発せられる声も、ベビーフェイスであることも、フリルをあしらったその服も。少なからず俺にとって、甘い存在である。
 一定の間隔で街灯がぽつりと灯る田舎道で、幼馴染みと二人きりになる。決まって夜中の三時に呼び出されるが、何をしようというのか。
 互いの近況を報告するでもなく、世間話もしない。無難と称される天気の話が、幼馴染みの口から出てくる筈もない。俺たちの間にあるのは、むせ返るほど甘ったるい、香水の匂いだけ。
 幼馴染みとの時間は、その日のうちに溶けて消える。明日には何も残ってない。その場のノリを楽しみたい幼馴染みは、誰とも深く関わらない。本音を語ることもせず、欲求だけを満たそうとする。
 愛されたいという飢えを凌ぐように、飽きることなく男を食い漁る。それが幼馴染みの生き方だ。俺には理解できない。
「呼び出す相手を間違えてないか?」
「そう思うくせに毎回応じるわよね」
 事実なので否定はできない。
 幼馴染みは親友の彼女で、俺は親友が大切で。でも、今こうして、裏切るようなことをしている。肉体関係を持たなかったらセーフなのか? 夜中の逢瀬を親友に話したことはない。やはり、アウトな気がする。
 幼馴染みとの関係がチョコレートのように感じるのは、俺がこの逢瀬を明日に持ち越したくないからだ。親友への後ろめたい気持ちも、何も成さない無意味な時間も、毎回誘いに応じる自分の下心も、捨て去りたい。
 どうして俺たちは一途にいられないのだろうか。

6/15/2025, 1:54:12 AM