Open App

「お姉さん美人だね、1人なの?」

非日常は日常には勝てない

人生は日常の積み重ねだから

非日常はせいぜい
クリームソーダのさくらんぼに過ぎないのだ

「今相手は?フリー?」

あのたった一つの
さくらんぼが食べたくて
クリームソーダを頼む人は稀だ
みんなクリームソーダが飲みたくてあれを頼む

「まじ!?こんな綺麗なのに?勿体ねえ〜」

センスのないリミックスが流れた小さな箱の中、
下品なライトに照らされた
私と同じくらいの背丈の男は
私の胸元を舐めるように見ている

「綺麗すぎるのかもな、
入ってきた時みんなお姉さんのこと見てたもん」

あのさくらんぼが
ないとみんなきっと物足りなくなる
でもあれがなくてもクリームソーダはクリームソーダ
満足する人はそれで満足できるのだ

ならあのさくらんぼは
なくてもいいんじゃないかと思う

緑色と白の中にぽつんと1つ
寂しそうな赤を見る度に
私はいつもどうしようもない気持ちになるから

「よかったらさ、この後抜けない?
近くに良いバーがあって」

私は日常にはなれない
非日常は憧れ尊ばれても
誰かに寄り添われることは無い

いつになったら
私は誰かの日常の中に置いてもらえるのだろう



そんなことを思っていたら
絶望的な気分になってきた
しかしこの男にこの気分を
覆せるほどの度量はなさそうだったので
今夜は1人で眠りにつくことにした

6/23/2023, 7:11:03 AM