いぐあな

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300字小説



 それは貴方の口癖だった。
『確かにこの地下都市の人口は減る一方だ。他の地下都市も。人類は緩やかに滅亡に向かっていると考えていいだろう』
『だからと言って、俺達がライフラインの保守点検整備の手を抜いて良いはずがない』
『俺達は例え人類が最後の一人になったとしても安全な日常の中で最後を迎えられるように尽くす』

「第一核融合炉に不調が!」
「メインを第二核融合炉に切り替え! 更に予備として第六、七、八融合炉の出力をアップ! 緊急マニュアルに従い第一融合炉の稼働を停止します!」
「はい!」
 作業員が各融合炉の操作パネルに着く。
 五年前に遠く彼岸に旅立ってしまった貴方。はなればなれになっても貴方の志は皆の中に生きている。

お題「はなればなれ」

11/16/2023, 11:55:29 AM