イルミネーション
ざっくり分けると世の中には内側を飾る人と、外側を飾る人の二種類がいると思っている。
もちろんその真ん中の人もいるし、どちらかに偏りがあることをグラデーションと捉えるならば、とても二種類には分けられないが。
まぁそれはそれとして。
「家の外を飾るなんて馬鹿げてるよな。わざわざ金を掛けて他人を楽しませるくらいなら家の中を飾る方がマシだ」
まだかろうじてリビングに夫がいて、何となく点いているテレビを夫婦で見ていたときのことだ。
巷にLED電球が普及し、クリスマスシーズンになると一般家庭でも家の外をイルミネーションで飾ることが流行り始めていた。
その当時の会話だ。
嫌、たしか夫がそう言い放ったあと私は黙り込んでしまったのだった。
だから、正確には会話とは言えないかもしれない。
画面に映った家の塀には、ぐるりと煌びやかな豆電球の粒が散りばめられ、玄関先には二頭のトナカイが鎮座し暖色の光を放っている。
よく見ると、サンタクロースがカラフルな梯子を使って家の壁を登っている最中だった。
「いいなー、うちもあれやりたい!」
とっさにそう言いそうになっていた私は慌てて口を噤んだ。
もちろん言ってしまったってよかったのだ。
むしろ言ってしまった方がよかったのかもしれない。
あの時、もしも私がそう言っていたら、旦那は「えーホントかよ、本気で言ってるの?」などと口では言いつつも、望みを叶えてくれたかもしれない。
それくらいの度量や優しさは持っている人なのだから。
でも私は言えなかった。
馬鹿げていると思われること以上に、あまりにも夫と価値感がかけ離れていることにショックを受けてしまったからだ。
それ以来、また少し夫との距離は離れた。
ささやかな小さな灯りが、知らない誰かの心をそっと温めていることを大切だと感じる私は恐らく少数派なのだろう。
そして、そんな考え方をする人間がこの世に、しかもこんな身近にいることを、たぶん夫は一生気付かないのだ。
お題
イルミネーション
12/14/2024, 10:36:36 AM