ゴツゴツした大きな手と、しなやかな手。気が付けば、二人の手に両手をつながれながら歩いていた。
二人といれば、とても安心だった。二人は、道を作っているらしい。一人は、やさしくてちょっぴり心配性。もう一人は、やさしくてしっかり者。二人は、こう行けば近道になるかもしれない。こう作れば、遠回りになるかもしれないが、より安全だろう。そんなことを話し合いながらどんどん道を作っていく。
「どうやら、ここまでみたいね」
「もう別れるのか? まだこの子には早いよ」
引き返そうと心配性な方が言う。もう一人のしっかり者の方は首を横に振る。
「そんなこと無い。もう、この子は一人でも大丈夫」
ある日、「この先は、君にしか作れない」と、二人は居なくなってしまった。三人で作って来た道を、これから一人で作って行かなければならないらしい。
自分以外、誰にも行けない場所の地図なんてあるはずもない。この道の先の行き着く先は、他人はおろか自分さえも分からないのだから。不安になって、二人を探して引き返そうと振り返る。そこには、しっかりとした三人分が通れるくらいの広い道が出来ていた。
二人は、ここに来るまで道を作るたくさんのヒントをくれた。そういえば、時々、二人でさえ行く先に悩んでケンカしていたことがあったと思い出す。
別れるとき、心配性な方がちょっぴり寂しそうに「ほんとに平気?」と最後まで心配していて。しっかり者の方は、笑顔で手を振って「気を付けて、行ってらっしゃい」と言ってくれた。きっと大丈夫。二人の姿を近くで見ていたのだから。自分の力で、草木をかき分けて、不格好でも自分だけの道を作ってみせるから。
「行ってきます。お父さん、お母さん」
「さあ行こう」
6/7/2025, 3:50:36 AM