『ただひとりの君へ』
目が覚めて1番に目に飛び込んで来たのは、赤く染まったカーテンだった。
君とIKEAで買った白いカーテン。俺の好みとは全く違う部屋が完成されていく過程も、隣で真剣に選んでる君が見られるから好きだった。
思ったより強い光に差し込まれて、少し昔のことを思い出してしまった。
ひとまず、時間が分からないのでベットから降りる。
確かリビングにはスマホがあったはずだ。
「いてっ」
足元に落ちてる彼女につまずいてしまった。うずくまったまま動かない彼女の髪を撫で、おはようと告げる。
横に落ちている6時52分で止まった目覚まし時計を、跨いで階段を降りる。
「あーー、やっぱり遅刻確定だ」
右手のスマホには9時50分の文字が表示されていた。
「目覚まし時計ないと不便だなー。スマホの目覚まし使いたいけど、ベットの横に充電がないのがなー」
俺は朝は7時には起きていないと、会社には間に合わない。君がいてくれればこんなことにもならなかったのにな。なんて、俺がいなきゃ君がこんなことにもならなかったのだけど。
「やっぱり原因は、俺だよなー…」
そんな目が覚めた瞬間から持っていた自覚を再認識する。階段を登り、目覚まし時計を拾う。持った瞬間ヌメっとした。手に赤が移り、爪の隙間にまで侵食した。
「うぇ〜」
床で寝ている君と、横で静かに揺れているカーテンを見比べる。白を通り越してもはや青い君の肌を伝う、赤色は酷く綺麗で興奮した。
もし今自分の目の色を見ることが出来たなら、一生忘れることはないだろう。君の綺麗な赤色をこの瞳に閉じ込めることができたら、この目をえぐりとり、ストラップにして仕事鞄につけよう。そうしよう。
この通り。酷く思考が混濁している。
「君が美しすぎるのが悪いんだぞ」
君の顔を無理やり近づけて、君の唇に自分の口を押し付ける。そのまま横に流れるように舌で目元まで滑らす。
「うん、不味い」
「こんなに見た目は美味しそうなのにな、なんでだろう」
赤色ってすっごく美味しそうに見える。
君の背中と床の間に腕を入れ、足の膝の裏にも腕を入れる。持ち上げてそのまま隣のベットに置いてみた。
少しずつシーツに赤色染みていく。
「よし」
少しだけ君を左に寄せ、空いた右側のスペースに横になる。冷たくなった君の手を握った。
「君のこれからを奪ってごめんね。でも半分は、君のせいだよね。だって俺、部屋に入ってくるのは辞めてって言ってたじゃん?起こしてくれるのは嬉しいけど、扉の前までにしてって言ってたじゃん?約束破った君も悪いよね?君のことはすごく愛してるけどさ、約束破るのは違うもんね。」
「だからだからさ、慌てて目覚まし時計投げたら、たまたま直撃して、血が沢山出ちゃって、君が倒れたのも僕が悪いわけじゃないよね?」
「君は、顔もすっごく可愛いし、いつもへらへら俺の後ろついてきてさ、めちゃめちゃ優しくて、俺の事大好きだから許してくれるよね?」
「………。」
「……………………。」
「怒ってるよね、ごめん。」
「もし許してくれる気になったら、リビング来て。俺今日会社休んでさ、君のために時間作るから、待ってるね。」
手をも一度強く握ってから、ゆっくり離しベットから降りた。
1/19/2025, 3:36:19 PM