『ささやかな約束』
ささやかな約束をした。
五分後には忘れていて、たまにふと思い出すことがあるような……よくある普通の何てことない約束。
きっと、この約束を叶えることはないだろう。
なんて馬鹿みたいな僕は思っていたのだ。
――どうして、そんな事思えたのだろう。
幸せ過ぎたからだろうか。
僕は誰でも知ってる当たり前ことを失念していたのだ。
……人が死ぬなんて、当たり前のことなのに。
「君との約束、今ここで果たすよ」
僕はそう言って、彼女との約束通り。
物言わぬ彼女の唇に、最期の口付けをした。
『もしも私が死んだらね、最期にキスしてね! そしたら、そうだなぁ……もし他に好きな人が出来ても、仕方ないから許してあげる! ……だって、あなたには幸せになって欲しいから』
おわり
11/15/2025, 2:20:05 AM