ささほ(小説の冒頭しか書けない病

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花畑

高山植物が一斉に咲く場所を花畑と呼ぶなら、きっとこれは花畑なのだろう。原っぱに雑然と、時刻も季節もめちゃくちゃに咲き乱れる花々は、レンゲ、クローバー、カタバミ、オオイヌノフグリ、ホトケノザ、ツユクサ、タンポポ、ヨメナ、カキドオシ、コヒルガオ、マツヨイグサ、ニワゼキショウ、ハルジオンかヒメジョオン、イヌタデ、そして、彼岸花。

いちばん目立っているのは彼岸花だ。あの世とこの世の境にはいろんな季節の花がごちゃごちゃ咲くお花畑があるんだよ、と亡くなった祖母が話してくれたっけ。だとしたら私は死んだのか。どちらに歩いてゆくべきは不思議とわかったので私はひとり歩き続けた。人が皆いずれはひとりで歩くことになる死出の旅路を。





※※※


以下蛇足。

あの世とこの世の境にいろんな季節の花が適当に咲く花畑があるという話は、松谷みよ子の『あの世からのことづて』で読みました。きれいに植えられた花壇のような花畑ではなくそのへんの野花がやたらと咲いているのだそう。

いろんな季節の花ということで水仙を入れようかすごく迷いましたが、水仙が浮くような気がしてやめました。冬の野花って他に何があったでしょうか。春の花なら他にヒメオドリコソウやハハコグサも入れたかったんですが春の花ばかりになるので没。ハルジオンは春の花でヒメジョオンは夏の花ですが、混生してたら私には見分けがつかないので名を並べました。ニワゼキショウやクローバーは帰化種で日本原産ではなく、境の花畑にあるかわかりませんが、親しみ深い花なので入れました。

この世とあの世の境のお話では、ローズマリ・サトクリフの『子犬のピピン』という絵本が好きです。手塚治虫には「0次元の丘」というのがありました。山岸凉子にはそれこそ何作も恐ろしいのがありますがタイトルを書くとネタバレになるので書きません。

9/17/2024, 10:23:36 AM