『これからも、ずっと』
「これからも、ずっと一緒にいようね」
頭の中で、幼い自分の声がした。
むかしむかしの約束。
相手の姿も場所もその前後も何も覚えていない。
むしろその約束さえ、忘れてた。
思い出したのは、偶々観ていたドラマで似た台詞があったからだろうか。
「誰だっけ……」
幼馴染というような人が居れば良かったけれど、該当する人はいない。
記憶を振り返ってみても、ピンとくる人もいない。
もしくは覚えていない。
「……」
静かな部屋にドラマの続きが流れる。
画面の中の約束は守られるのだろうか。
いや、相手はフィクションだ。
最後は「ふたりは末永く幸せにくらしました」めでたしめでたしの世界が当たり前の世界だ。
何だかんだあっても、私が見守ってようがいまいが、結末はそんなものだろう。
テレビの電源を切って、ほんの少しの苦みをビールの苦みで誤魔化し飲み込んだ。
「ふぅー」
まぁ所詮は子どもの約束。
現実というものが見えていなかったし、そこまで真剣に考えていなかったかもしれない。
それでも気分は下がって、机に突っ伏す。
勢い良すぎて、ガチャリと眼鏡と机がぶつかった。
「……あぁ、そうだ」
思い出した。
霧がかっていた記憶が晴れていく。
そう、あの時確かに約束したんだ。
何処もかしこもキラキラ光って綺麗な眼鏡屋で、その中でも一等気に入った赤い縁の綺麗で可愛い眼鏡。
それが自分の物になり、これから先もずっと一緒だと胸を躍らせていたその時に。
「なんだ、忘れてても守ってたじゃん」
随分と古ぼけてしまったけれど、未だ私の顔にある赤い眼鏡をそっと撫でた。
4/8/2024, 1:16:31 PM