お題 忘れたくても忘れられない
子供の頃見た光景が、今も脳裏に焼き付いている。
そんな事が、誰でも一つはあるだろう。
私にもそんな忘れられない光景がある。
あれはそう、まだ片手で足る歳の頃だったろうか。
何処かに出かけた後、帰路に着く車の中で私は何気なくシートに仰向けに寝転がった。
そうすると、顔は逆さまになるので普段見る世界とは真逆の光景が窓の外に広がるのだ。
あの日は確か、雨が降った後の晴天が広がっていたと記憶している。
頭に血が上る感覚を感じながら、私は目の前の光景に夢中になっていた。
空から垂れるようにそびえる電柱だとか、水溜まりのように広がる蒼天と雲。
まるで世界が逆転してしまったような不思議な感覚。
私は忠告する親の言葉も意に介さず、阿呆のようにひたすら目の前を見つめていた。
果たして、あの時の私は天地を理解していたのだろうか?
空の大地、地面の宙、大地、空、大地、そら。
あたまに、ちがのぼる。
そこから先は、覚えていない。
幼い頭が思考に耐えられなくなったのか、そこで車が家に到着したのか。
いずれにせよ、この経験は私の短くない生の中でも頻繁に思い出されるものとして脳内に残り続けている。
また、これは私を空想好きたらしめた要因の一つでもある。
もしこの経験が無ければ、とまでは言わないが、この経験は私が創作を夢見る過程に一種の影響力を与えている。
いつか、あんな世界に行ってみたいと思ってしまう程には。
10/17/2023, 4:04:07 PM