#遠い日の温もり
忘れていたのかもしれない
電車に揺られ数時間。ゆるりと懐かしい景色になっていく窓を眺めながら、ふとそう思った。
何もせず、ただこうしてボーッと景色を眺め、その場の心地よい日差しと、周りの音に身を委ねる。
今もほら、到着を知らせる、人の声の車内アナウンスが聞こえてきた。
...昔はそう言う時間が好きだったはずなのに。
輝くビルの光に慣れ、汗をかくからと日陰を選び、昼夜問わず人混みに揉まれ。
何時しか、”好きな事をしていた自分“を忘れてしまっていたのかもしれない。
...だから、ここに戻ってくるよう言われたのかもしれない。
電車がブレーキの音と共に止まり、そのまま屋根も壁もない乗り場に降りる。
切符を渡し、先程からチラチラ見えていた、これまた懐かしい背中に声を掛ける。
「母さん、ただいま」
忘れていた分まで、これから懐かしさを辿っていこう。
随分デカくなってしまった身体を包む、遠い日の温もりは、今も尚変わらなかった。
12/24/2025, 2:22:37 PM