夏の繁忙期の打ち上げが終わって
二次会も終わって
気がついたら
二人きりで
お互いどっちの駅かも知らなくて
聞かれもしないから
聞きもしなかった
ただ川沿いを歩いて
しばらくして
並んで座って
話したりして
蚊に刺された
立ち上がって手を差し出されて
その手を取って
また歩き出す
川沿いを上流に向かって
一駅分
三条大橋の烏帽子が並ぶ
時刻は0時半を過ぎた
終電はない
蚊に刺された腕を掻きながら
「もう、帰らなくてもいいかな」
と呟いた
「痒い?」
聞いてないフリで聞かれた質問に答える
「痒い」
川沿いから路地裏に入り
「宿泊」の文字が目に入る
夏のせい
#62「真夏の記憶」
8/12/2025, 11:04:46 AM