八梅

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いつまでも捨てられないものをずるずるずるずる引き摺って。
いつまでも頭の中に残ってる。

それはいやな思い出だったり、苦い経験。
自分の発した言葉や仕草、行動で選択してきた過去。

そんなものばかりが頭の片隅にいる。

どうしたら忘れられるだろうか。

暗い、暗い、暗い。
ひたすらに暗い。

頭の中は墨で塗りたくられたように真っ黒で。
脳内に連動して気持ちまで底深くまで沈んでいく。

そんな時、私は妄想する。
どうにもならない時もあるけれど、ひたすらに考えを巡らせて。

脳内に広がる空間で空から落ちてみるんだ。

高い、高い、本当に高いところ。
地平線が見える海の上がいい。

はるか上空から身を投げ出して、パラシュートなんてつけないで。
身ひとつ、両手を目一杯に広げ、ばっと飛び出す。

ぐんぐん体は落ちていって。
厚い雲間を抜けた先は何にもない、遥か彼方まで続く広い海で。

視界に映るのは、キラキラと光る水の青。
そうだなあ。天気はやっぱり快晴がいい。

時間は明け方。清々しいほどの空気をこれでもかと吸い込んで。
新鮮な空気で肺を満たす。新しい酸素が血管をたどり、頭の先から足の先まで、体中の酸素が入れ替わる。

それほどまでの清さ。

体が生まれ変わるのを感じながら、地平線のその先を視界に映し落ちていく。

風の音しか耳に入らない空間で空と海の境界を見てると、自分の考えてることなんて本当にちっぽけなことなんだ。
つい、考え込んでしまうけれど、なんだかどうでもいいことのように思えてくる。

暗い思考は空の上へ置いてきてしまえばいい。

置いてきた先に残るのはきっと前向きで明るい、清らかな気持ちだけ。

どこかの誰かの、心に少しだけ残ればいいなと思う。
沈んでしまった時に、ちょっとだけ妄想してくれればいいなと思う。

おんなじような気持ちの誰かが綺麗な青空を、上を向いて歩ける、そんな文章が書けたらいいなって思う。

2024.08.18

8/17/2024, 11:15:53 PM