『星が溢れる』
流れ星たちは、これまで多くの願い事を託されてきた。
星たちはその輝きで願いに光を当て、それが叶うように力を貸してくれる。だが残念なことに、必ずしもすべての願いが叶うわけではない。
宿った願いが叶った星は役目を終えてその光を落とすが、願いが叶わないままの星は、流れ着いた場所で微かな光を残したまま、いつかその光が消える日がくるのををただずっと待ち続ける。
願いを叶えられなかったそんな星々が辿り着く場所を、いつからか誰かが『星捨て場』と呼ぶようになった。
誕生してから途方もないほどの長い年月を経た星たちは、最後の最後にそこに流れ着いた。そして、それからまた途方もないほどの年月をここで過ごしている。
ここにある願いのほとんどがもう叶うことはない。叶わないならば、消えゆくこともできないのだ。
幾年が過ぎ、星捨て場の星は時が経つにつれてその数を増やしていった。夜空の光が一つ、また一つと落ちていくたびに、その中から小さく寂しげな光がそこに集まっていく。
そして、空の星のほとんどが願いとともに流れ落ちてしまった頃。最初は別々だった小さな光たちは、徐々に1か所に押し集められていた。
だんだんと、だんだんと集まった光たちは大きくて明るい1つの光へと変わっていき、最期には目もくらむほどの眩い光を放って空に弾け散った。
叶わなかった数多の願いは光となって空に散らばり、また幾千もの新しい星々が暗い夜空に誕生した。
再び星でいっぱいになった空に、またすぐに願い事が託される。
消えゆく光もあれば、消えることのできないままの光も確かにそこに存在する。星たちはただ、自分の運命をまっすぐに受け入れるのだ。
一度からっぽになった星捨て場。でももしかしたら、すでにそこは再び流れ着いた次の世代の星々によって、僅かな光を帯びはじめているかもしれない。
3/15/2024, 9:04:48 PM