Ryu

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「ちょっとこれ、誰のセーター?」
同棲を始めたばかりの彼女が、クローゼットから見覚えのあるセーターを持ち出してきて、僕に問い詰める。

「ああ、僕のだよ、それ」
「へぇ…これ、手編みだよね?」
「そう、よく分かるね」
「こーゆーの、捨てられない人なんだ」
「捨てたくは…ないかな」
「過去を引きずるのって、カッコ悪くない?」
「そーかな。引きずってるつもりはないんだけど」
「でもさ、今、気まずいって思ったでしょ?」
「んー、まあ、ね」
「それは、引きずってる証拠なんじゃない?」
「いや、だって、当時はホントに好きだったんだよ」
「あーそーゆーこと言っちゃうんだ。正直過ぎるのも考えもんだよね」
「今だって、機会があれば、と思ってる。なんなら、君にも認めてもらいたいんだ」
「ちょっと…待ってよ。本気で言ってるの?」
「本気だよ。実を言うとね、今でもホントに好きなんだ。これからも、続けていきたいんだ」
「えぇ…衝撃の告白なんですけど。もう出ていこうかな」
「なんで?何がそんなにいけないの?」
「…もういい。分かったよ。好きなようにすればいいじゃない。私は出ていくよ」
「ちょっと待ってよ。どうして、好きなことをやめなきゃならないの?確かに、男が編み物なんてって偏見がない訳じゃないけど、別に女の子だけの趣味じゃないだろ。男だって、自分のセーターくらい編んだっていいじゃないか」

それからは、何故か彼女が上機嫌で、「自分も編み物を覚えたい!」なんて言い出した。
なんで最初からそう言わなかったんだろう。
ちゃんと、「僕の手編みのセーターだよ」って言ったのに。

11/24/2024, 12:13:23 PM