ミントチョコ

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題 もう1つの物語

私には好きな人がいる。
でもね、実はその人とは別にもう一人、ずっと心から離れない人がいるの。

その人は、幼い頃からずっとずっと遊んでいた幼なじみなの。
小学校までは一緒で、ずっと遊んでたのに、中学で離れてしまった。

・・・不思議な子だった。その子の周りには動物とか沢山寄ってきて、動物の心が読める子だったの。
私は・・・実は植物の心が読めて、今悲しいとか喉渇いたとか、苦しいとか分かったんだ。

だから、彼は私に動物の話していることを教えてくれて、私は彼に植物の思念のような物を教えていたんだ。

あんなに穏やかな時間はないってくらい、穏やかだった。
あの子のオーラはハッキリと緑だったんじゃないかなと思うくらい平和で・・・。

大好きだった。
誰よりも大好きな人だったから、今も私の心の中で大切な思い出になってる。
今会えなくて悲しいし、切なさもある。

今も色褪せないし、1つの大きな物語のようにすら感じる、壮大な経験だったんだ。

でも、今気になる人がいる。
私はチラッと横を見る。

「ん?」

淡い茶色のウェーブヘアの彼が私に微笑む。
優しくて、なんか・・・なんか例の彼を彷彿とさせる。

優雅な感じで、メガネかけてる。
知的な感じだ。

物腰柔らかくて、優しい。
優しすぎる位優しくて。

だから、好きになってしまった。

「ううん、何でもないよ」

私は彼に微笑む。
でも・・・でも、何かチクッと罪悪感を感じる。

昔の彼が、私の心を捉えてる。 

だから、心が切なくなる。
どうしたらこの罪悪感はなくなるんだろう。

今の彼と恋人になって昔の彼と再会してしまったらどうしよう。そんなあるわけない気持ちに。囚われる。

あの時間・・・。
動物の心と植物の思念を伝えあってた時間は褪せることがない。
何にも替えがたい時間だったんだ。

本当は待ってたい、探したい、あの子を。

なんて思って自嘲する。
あの子はとっくに私のことなんて忘れてしまって、可愛い彼女といるかもしれないのにね。

未練がましいなぁ。

「今日どっか行く?」

今の彼が優しい微笑みで私に話しかけてくる。
まだ友達だ。恋人になれるか分からない。

でもね、でも、昔のあの子に似てるっていう要素だけで本当は彼のことが好きなんじゃないかっていう疑惑も湧いてくるんだ。

どうしたらいいんだろう。

何度も逡巡して気持ちは、解決を見ることはない。

でも・・・。

「うん、行こうか」

私は彼に微笑み返す。

だって私の今「好きっ」て気持ちも確かにあるから。
だから・・・。

過去のあの物語は多分色褪せないんだろうと思う。

でも、私の物語は、またここから始めていくんだろう。
あの子との大切な気持ちを抱えて、複雑な気持ちを抱きながらも・・・。
この今いてくれる彼を想うことで、新しい物語を進めていくんだろう。

10/29/2024, 11:29:37 AM