【これからも、ずっと】
目の前に広がる大海原。透き通るように真っ青な海が、どこまでも雄大に続いている。
白砂を踏み締めて、波打ち際へと歩を進める。冷ややかな水が、すぐに素足を包み込んだ。吹き抜ける海風が、私の髪を軽やかに揺らしていく。
首から下げたシルバーのペンダントを、左手でそっと握り込んだ。貴方と共に幾度も来た冬の海。一緒にはしゃいで、一緒にのんびりと会話を交わして、一緒に笑い合った。
もう、この世界のどこにも貴方はいない。白波がちゃぷんと音を立てて、私の足首へと飛沫をあげる。その冷たさが、やけに身に染みた。
(それでも、貴方はここにいる)
ペンダントの中、貴方を詰め込んだ。貴方だった焼かれた骨の欠片を、大切に。これからもずっと、冬になれば貴方と一緒にこの海へ訪れる。貴方と共に、私は生きていく。
(ずっと、ずっと。一緒にいてね)
貴方の優しい笑顔を思い出しながら、温度のないペンダントの表面にそっと口づけを落とした。
4/8/2023, 1:08:26 PM