未知亜

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ㅤ送ったメッセージは、三日経っても既読にならなかった。美優の心には、昔のことがぐるぐる渦を巻きはじめている。
ㅤ最初に距離が近いと言われたのは小五の時だ。自分がなにか場にそぐわないことをしたらしいということはすぐに理解出来た。
ㅤけれど、友達がどうしてほしがっているのかは正直よく分からなかった。だから、「ごめんね」と笑うこと以外、美優には出来なかった。
ㅤそれからも、似たようなことはたびたび起きた。自分なりにいろいろ工夫しているのだが、「何考えてるかわからない」とか、「距離が近い」とか言われた。何もしないのが一番なのではと思って黙っていると、「なんか、美優ちゃん、壁を感じる」と笑われた。
ㅤ答えはいつも相手に握られているのだ。正解か不正解かは、後にならないとわからない。常に後出しじゃんけんわーされているような感覚。努力だけで太刀打ち出来るはずも無い。
「また、めんどくさい認定されちゃったのかなあ……」
ㅤスマホを握り締めたままベッドに倒れ込む。声に出して呟くと途端に寂しさに飲まれそうになった。
ㅤ大きくため息をついたところで、手の中の板がブブッと震える。
『ももたさんが画像を送信しました』
ㅤ横目でスマホを覗くと、画面上部に通知が表示されていた。
『取り急ぎこれだけ見せたくて!幸運の印だって(big love)』
ㅤbig love?ㅤなんだそれ?
ㅤ不思議に思いながら通知をタップする。空の写真が目に飛び込んできた。ビルの合間にくっきりとした虹が浮かんでいる。それも二重にだ。
「……ダブルレインボーだ」
ㅤ先月だったか、幸運の証だという会話をしたことを思い出した。
『詳しい話はまたゆっくり聴かせてね!︎‪』
ㅤ追加で届いたメッセージの最後で、ピンクのハートがくるくる回る。最初に届いたメッセージの末尾にも同じ絵文字が踊っていた。
ㅤそうか、これは地球の愛のおすそ分けかもしれない。
ㅤ美優の心があたたかいものでほんのりと染められていく。まさしく、big love! という感じ。
ㅤ背を伸ばしてベッドの縁に座り直すと、美優は口の端をキュッと上げ、お礼のメッセージを入力しはじめた。


『big love!』

4/23/2025, 9:05:36 AM