久世宮 綴

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ふと空を目をやると、夜の暗闇の中で光る月が目に入った。手を伸ばし掴もうとしても掴めるはずもなくすり抜けていく。あの人の腕を掴めなかった、離された手を離してしまった時のようだった。
手をおろそうとした時、視界に映りこんできたのは月に照らされた指輪だった。
「ふふ、あなたは暗い夜でも私を照らしているんだね」
高く遠い夜のどこかで燦々と輝きをやめず、柔い光が地上を照らす。
それは、いつか誰かの標となる月。


お題「月夜」/2024.3.7

3/7/2024, 11:16:43 AM