当時中学生の私は、世の中の全不幸を背負っている様な顔をして、自転車を漕いでいたと思う。
家も町も学校も、同級生も大人も、見えるもの全てを憎み、何よりも自分自身を殺したいと思っていた。
今でも、自分の事は汚く感じ、いつしか来る「死」を保険にして生きている事に変わりは無いけど。
つい先日、唐突に。
母が、死んだ。
正確には死んでいた。
蒼黒く紫になった身体。眼は落窪み、鼻から虫が出入りする。死の臭いは私を包んだまま離れない。
父を看取り、母を見送り、そして近い将来、これから妹を看取る運命。
「もうこれ以上、輪廻転生したくない。だから…これが最期なら…落ち着いたら、好きに生きよう」
だから、今。
私は、何処かの小高い路地の上から、足を広げて髪を靡かせ、風を作りながら自転車で駆け下りる夢を見ている。
題:自転車に乗って
8/14/2024, 7:39:39 PM