『裏返し』
厳しい言葉は、その人を思うからこその裏返し。…それって本当?
「もう誰もお前に期待しなくなるぞ。」
「このままつまらない人生でいいのか?」
「俺は怒ってる訳じゃ無い。ただ、お前のために言ってやってるんだ。」
…私のため。上司はよくそういう言葉を使う。なんて部下思いの素晴らしい上司。彼は事あるごとに為になる話を聞かせてくれる。
彼曰く、私の人生はもっと先のことを考えて、動いていくべきなのだという。今をただ怠惰に生きるのではなく、将来のことを考えて行動を起こしていくべきなのだ、と。なるほど。確かにその通り。これぞまさしく人生の先輩からの有難いアドバイスである。
「今みたいなつまらない人生は嫌だろう?」
そういう話をした後、彼はよく私に問いかけてくる。だから、私も決まってこう返す。
「…はい。嫌です。」
その言葉を聞くと、いつも上司は口先をにんまりと上げて満足そうに笑うから。
いつ、私が自分の人生をつまらないと言った。なぜ、私の人生の価値を他人に決められなければならない。私のため。そんな大義名分で行われる彼のご高説は、いつも私を否定する。
「もう誰もお前に期待してないんだから、好きにやりなさい。」
そんなことを私に平然と言ってくるのは、私に発破をかけるため?申し訳ないことに、私には逆効果のようです。
厳しい言葉は、その人を思うからこその裏返し。…それなら、そんな言葉も、思いも私はいらない。彼は私のためを思って言ってくれている。例えその気持ちが本物だとしても。
───そんな裏返しの言葉、裏があるかなんて、もう分からないのだから。
8/22/2024, 1:28:42 PM