コルン

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「誰かしら?」

プリンセスも楽ではない。じきにこの国を一身に担う王女となる者として、社交術にマナー、政治のあり方や護身術など、学ばなければならないものが多すぎる。これを全てお父様のお仕事のお手伝いの片手間に行うのだから、体がいくつあっても足りない。
束の間の休憩として自室へと戻ってきたのはいいが、この間にもしばしば来客があるのだ。ついさっき大臣が出ていったかと思えば、数分後にはまた扉がノックされる音が聞こえる。そんなに何度も小突かれて、扉が可哀想だと思わないのか全く。
ため息をひとつついた後返事をして、入ってきたお父様の側近は数言話してまた出ていった。扉が完全に閉められたのを確認して、またため息をこぼす。
プリンセスたるもの、常にお淑やかで、笑顔で、前を向いていなければならない。必死で身につけた社交術で、愛想笑いはマスターした。お城のみんなにはバレていないはずだ。
また扉が小突かれる音がする。お得意の笑顔を貼り付けて、声をワントーン上げて、背筋を伸ばして。しっかりしないと。私は、プリンセスなのだから。

「はい、おりますよ。誰かしら?」

3/2/2025, 12:18:59 PM