雲一つない晴天を最高、というなら、今日の空模様は最低最悪というやつだ。
灰色の空に、黒い雲が工場の煙のように充満している。
時折、猫の機嫌のような風と共にぽつり、ぽつりと水滴が顔にぶつかるのは、雨か、電線を濡らしていた雨粒か。
極めつけは、
「あ、光った」
間を置いてから腹に響く轟音。遠雷。
「…ははっ」
雷に少し心躍るのは、さすがに幼心が過ぎるだろうか。
でも、不謹慎さすら感じずにわくわくする気持ちには嘘が付けない。
しとしとと音もせずに肌を撫でるような湿ったらしい雨は大嫌いだ。
でも、この小さな嵐のような天気は嫌いじゃない。
手のつけられない悪ガキのように荒れ狂い、滅茶苦茶で、破茶滅茶に笑う、あの人たちを見出してしまうから。
ゾクリとする真っ暗闇の中に羨望を、そして、切り裂く光に美しさを。
「あ、降ってきた」
ぽつ、ではなく、ボツボツとした雨が地面を叩いて奏で始めた。
それはすぐに矢に変わり、天からなだれ落ちてくる。
周波数の合わないラジオのような水音に、横切る落雷。
彼を邪魔するものは何もない。
「よーし…仲間入りするぞっ、と!」
少年は、屋根の下から飛び出した。
【空模様】
8/19/2024, 2:24:10 PM