白井墓守

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『既読がつかないメッセージ』

毎日、毎日。
私は既読がつかないメッセージを送り続けている。

朝におはようから始まるそれは、今日は空気が乾燥しているだとか、道端にこんな花が咲いていたとか、そんな些細な事ばかりを綴って、夜にはおやすみと返信を待っているというメッセージで私の一日は締めくくられる。

「もう、やめなよ。返って来ないの分かってるでしょ?」
「……もうちょっとだけ、お願い」
「…………馬鹿、もう見てられない」

ああ、また友達を一人なくした。
心の灯火が消えたような、冬に一人突っ立っているような寒さが私を襲う。

……それでも、私は既読がつかないメッセージを送り続けることをやめなかった。

ずっと、ずっと、ずっと……何年も、何年も。

真っ白い部屋、そこにあなたが眠っている。
ずっとずっと何年も、眠っている。

あなたが、約束してくれたから。
口下手なあなたが、メッセージを送るのが苦手だと電話ばかりしていたあなたが、次は頑張って返してみると、そう言って約束したのだから。

――これは一種の願掛けだ。

どんなに周りから人が居なくなったとしても、私は既読がつかないメッセージを送り続ける。
……そうしないと、あなたがこの世から消えてしまう気がして怖い。

「はやく、おきて……ばか」

胸からせぐりあげてきた感情と共に、大粒の涙が目から溢れ落ちた。
窓から入った風が私の頬を優しく撫でたその時だ。

ふと、眠るあなたのまぶたが、ぴくりと動いた。

「――」

9/20/2025, 10:55:22 AM