【きらめく街並み】
「今年も寒いですね〜……」
「だねえ、こんな日に外回りなんてツイてない」
吐く息が白い
きらめく街並みは奥底にある浮かれ心を照らしてくるが、生憎まだ小一時間は仕事である
「律さん本当にそんなに軽装で良いんですか?まだ取りに帰れますよ?」
「ええ?コート着てるし、大丈夫じゃない?」
そう言って手を広げる律さんは、厚手のコートを1枚羽織っただけで、手も鼻も赤くなってしまっているのが見て取れる
「イヤーマフもマフラーも、手袋すらしてないのに良く言いますね……」
ため息を漏らして、向かいから来た人を躱す
飾り立てられた街を歩く人達は、みんなどこか楽しそうだ
「……律さんって結構そういうとこ無頓着ですよね、夏も対策してなかったし…」
「…えい」
「うわっ!?」
突如として頬に走る冷たさに声を出して驚けば、隣でくすくすと笑う彼の笑顔が見えてしまった
普段はあんなにも頼りになる人なのに、どうして、こんなにも愛おしいのか
「一応ポケットには入れてたんだけど…俺の手そんなに冷たかった?」
「……超冷たいですよ、やっぱ手袋いりますって」
「んーじゃあ…」
手袋越し、さっき頬に触れたあの冷たい手が触れる
「とりあえずは柊で暖をとろう、名案じゃない?」
いたずらっぽく笑う目の前の誘惑に、喉から手が出そうになる
「…今日だけですよ」
「えぇ?けち」
嗚呼、浮かれている
街も、自分も
12/5/2025, 6:48:19 PM