300字小説
願いの言葉
「はじめまして。君のこれからの時間が素晴らしいものでありますように」
始まりはいつもこの言葉を掛けることにしている。
家庭用ロボットの試験部門。彼らは、ここで一度起動し、確認テストを受けて、初期化され、購入家庭に届けられる。
最初の有償アップデートを受けるのは出荷された機体の半分。次のアップデート、その次とパーセンテージは下がり、機体交換してまでして使って貰えるのは、ほんのひと握りだ。
それでも。
「うちのロボットがここのメーカーので、私も彼のようなロボットが作りたいな、と」
何年かに一度、そんな新入社員がやってくる。
だから、今日も。
「はじめまして。君のこれからの時間が素晴らしいものでありますように」
お題「始まりはいつも」
10/20/2023, 10:49:18 AM