NoName 777

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「誰かしら?」

その言葉に僕の心は凍りついた。

目の前の彼女は心底不思議そうにこちらを見ている。

まるで、本当に初めて会ったかのように。

「ほっ、本当にわからないの?」

「えぇ、初めまして、ですよね」

僕は、彼女に家が1軒建つほどの額を貢いでいる。

美味しいものも、プレゼントも、何もかも彼女の為に。

「はっ、はは」

「なっ、なに、気持ち悪い笑みを浮かべて。警察を呼びますよ」

きっと、きっと彼女は記憶喪失なのだ。そうに違いない。

「どうしたよ?」

「あっ、ハニー。よく分からないけれど、この人が付き纏ってくるの」

「あん?この野郎気持ち悪いんだよ」

左からの衝撃に思わず吹っ飛ぶ。

痛い。

殴られたのだ。

「あれ?こいつ、お前がキャバしてた時の太客じゃね?」

「あらそうなの?私、ブサイクは覚える気が無いから分からないわ」

「ギャハハ。めっちゃくちゃ貢がしてただろ。お前クズだわ」

「もう、やめてよ」

「まぁ、お前は綺麗だからな。全てが許される」

「えへへ、そうよね」

僕は、口から血を垂れ流しながら、もう立つ気力もない。

2人はいつの間にかいなくなっていた。

「……」

人間、中身が大事。うん、中身が大事だ。

中身を見抜けなかった僕が悪い。それに、外見で選んでいたのは僕だってそうじゃないか。

「は、ははは、あはは」

……嘘だ。本当は気づいてる。

見た目で選ばなくても、見た目で選んでも、どっちにしろ同じ目にあってきた。

中身を重視しようが外見を重視しようが、どっちでも同じ目にあってきた。

中身なんて、ほんとに人は見てるのかな。

「……外見が悪いやつは、ATMとしてしか生きる道がないのかな」

生きてればいいことがある。真面目にコツコツ。必死に生きなさい。
本当に?

「……あはは、そうか、そうだよね」

ATMとしてしか役に立てないのだから。ATMとしてしか見られてないのだから。

「ATMとして、働かせるために、そうやって洗脳するわけだ。あはは、あははははははははは」

そうか、ATMが欲しいのか。

だから、真面目に働かないと周りは弾圧してくるのか。

「ギャハハハハハハハハハハハハハハハ」



新聞の一面に、無差別殺傷事件の記事が出る。

さぁ、貴方は、これは彼だけが悪いと思いますか?

こんな化け物を作るのは、貴方達の人を見下す心なのかもしれません。

3/2/2025, 11:01:34 AM