12歳の叫び

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深く深く、落ちてゆく。
深海の海に落ちていく。
これは、感情の持ったクラゲの話――

「ねね! 死んだら何になりたい?」
少し変わった友達が言ってきた。学校へ向かう道。
「死んだら……? うーん―― クオッカとか」
「クオッカ……? なんで! 私はね! 海月がいい!」
「あははっ! 病み垢かよ!」
「病み垢? 海月になりたいだけで病み垢なの?」
確かに……。海月は感情がないから海月になりたいとか、星になりたいとか言う人は沢山いて、それを聞いて心無い言葉をなげかけるネット民を沢山見てきたから私はそう言った。でも、なんでそうなったんだろう。自分が何になりたいだろうが勝手だし、別に痛くも感じない。
「……まあいいや! てか、クオッカって世界一幸せな動物だもんね! かわいいね」
「ごめんね。病み垢とか言って」
「別に気にしてないよ。ふふ」
なんだか、嫌な空気になってしまった。
「海月ってさ、本当に感情、ないのかな」
「感情……。どうだろ。脳みそがないからないんじゃないの?」
「ほんと、おかしなこと言うけど聞いてくれる?」
私がそう言うと、友達は首を傾げて聞こうとしてくれた。



「私、みんな寝てる時は海月なのかもって……思う」


「え?」


「寝てる時の自分は、何も考えてないでしょ? 何かあるとしたら、夢を見る。寝言を言う。寝相の良し悪しがある」



「……つまり?」


「寝相ってクラゲの動きなのかなって。感情のない海月ながらに動こうと藻掻いてたりして? とか考えちゃうの。死んだ時だって、みんな海月になって無の世界を彷徨ってる」


「なんだか……難しいね……。まあ要するに、寝てる時、死んだ時、みんな海月になってるってこと?」


「うん……、まあ、そうなったら辻褄合わないしおかしいから違うともうけど、こう考えると楽しくない? 寝てる時、死んだ時の自分を知れたみたいでさ」


「……まあね」

落ちてゆく。57分前まで海月だった私の死体が――

11/23/2024, 12:00:02 PM