しじま

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いつもなら足早に通り過ぎてしまう商店街の花屋の前で、今日は足を止めた。

仕事終わりの帰り道、大寒の、氷の礫が混じっているかのような痛く冷たい風がアーケードの中まで入り込んできた。

吹き抜けていく寒風を肩を窄めてやり過ごしながら、オレンジ色の暖かな証明に照らされた花材を見つめる。

ああ、もうそんな時期か。

なんの変哲もない、黄色い花を咲かせた菜の花が中途半端に二本だけ残っていた。

綺麗なのに残念だ、二本だけでは売れないだろう。

寄り添うこと無く離れている菜の花を眺めていると、花屋の店員が外に出していたポット苗を黒いカゴごと店内に仕舞いはじめた。

ああ、もうそんな時間か。

今ならまだレジを締めていないだろう、と再び外に出てきた店員を呼び止めて、その二本を買い求めた。

テーマ「きみに届けたい」

1/30/2024, 2:29:26 PM