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『I Love…』

「愛している」
「はい?」
 私の愛の告白に、彼はそのエメラルドのような瞳をパチクリと瞬かせた。どうやら私が何を言っているか分からなかったようで、もう一度、ゆっくりと伝える。
「君を、愛している」
「いえ、聞こえています。急に言うものだからなにかと思って」
 確かに、私の双魚宮に来た彼を部屋に通し椅子に座らせ、ハーブティーを出したその時に脈絡なく言ったのだからその反応も当然だと言えた。それが分かっていながら、私はまるで気付かなかったかのような反応を見せる。
「成程、ムードが必要というわけか」
 私は座る彼の前に膝を曲げ目線を合わせる。そして両手で彼の顔を軽く挟んだ。両手に、彼の体が強張る感触が伝わった。
「え、あの」
「君のことが好きだ。君の顔も、髪も、声も、その全てが愛おしい」
 私の言葉を聞くや否や、彼の顔が真っ赤になった。私が顔を近付けると、彼は慌てて両手で私の顔を止めた。
「ちょっと、近い、近いです」
 私は素直に頭を引いた。だが、視線は彼から外さず問い掛ける。
「君はどうなのだ。私のことをどう思っている。私のことが好きか、嫌いか」
「え、その――」
 私の問いに彼はただ目を白黒させるだけだった。
「私が呼び付ければ、君は宿敵であるはずの私のもとにすぐにやって来た。それはつまり、私に好意を持っているという解釈でいいのだな」
「それは、あなたが大事な用事があると言うし……それに宿敵だなんて……今はもう、あなたとは志を同じくする仲間だと思っているから」
「成程。それはつまり、私のことが好きということだな」
「それは拡大解釈が過ぎませんか⁉」
 彼が抗議の声を上げるが、私は聞こえなかったかのように無視する。
「君がそう思ってくれていて嬉しい。もう君のことを離したくない」
 私はそっと彼を抱き締めた。彼は私の腕の中でもがく。
「ちょっと、アフロディーテ! 聞いてます⁉ 僕は別にそんなつもりで言ったわけじゃ――それに用って何なんですか⁉」
 ――別に用などない。単に君の顔が見たくて、君の声が聞きたくて呼び付けただけだ。
 それを言えば、また更に彼の顔は赤くなるだろう。彼のことをしっかりと抱き締めながら、彼の反応を予想して頬を緩めた。

1/30/2024, 12:10:33 AM