休日の昼、リビングでのんびりテレビを見ていたら、自分の部屋に籠もっていた夫がリビングに入ってきた。
「なあなあ、これ見てくれよ」
私に見せるように、何かを差し出している。それは、本のようなものだった。表紙をよく見ると、『アルバム』の文字。端の傷み具合などから察するに、結構古いものに見える。
「アルバム?いつの?」
「そう、アルバム。それもまだ結婚して2、3年くらいのやつ!」
「10年以上前のってこと?」
「そうそう!部屋の整理してたら見つけてさー、めちゃくちゃ懐かしい写真だらけだよ!」
夫は興奮した様子で、アルバムを開いて見せた。
夫が開いたページには、巨大なダムを背景に私たち2人が一緒に写った写真があった。
「これ、黒部ダム行ったときのじゃない。懐かしい!」
「だろだろ。このとき、めっちゃ暑かったよなあ」
「そうだったねえ。でも、そのおかげでダムの放水がすごい気持ちよかったんだよね」
「うんうん」
ページを捲る。
「あ、これ、秘境の温泉行ったときのじゃん」
「あー、これな。マジで秘境だったよな」
「山の中だったもんねえ。ここ、露天風呂が離れてて、夜に森の中歩かなきゃいけなくてちょっと怖かった」
「露天風呂までの道、マジで怖かったよなあ。その道で本当に合ってるのか不安になったもん、俺」
「あれは不安になるよね。露天風呂自体は最高だったんだけど」
「確かにあれは最高だった」
ページを捲っては、写真から溢れてくる思い出に、ふたりして浸って、たくさん語り合った。
アルバムを全部見終わる頃には、青かった空は橙色に染まっていた。
夫とともに、2人で過ごした思い出を振り返る時間は、とても穏やかで楽しかった。
「最近旅行行けてないな」
「そうだね。また行きたいな」
「近い内に行こうよ。行きたい場所考えといて」
夫がそう言って微笑んだ。私もそれに頷いて、微笑み返す。
この人と、たくさんの思い出を共有してきた。この人とは、楽しかったこともつらかったことも、笑って振り返ることができる。
これからもこの人とふたりで、思い出を積み重ねていきたいと、強く思った。
11/23/2024, 9:15:06 AM