私の手はいつも冷たかった。冬などは、何に触れても、じわじわとした不快な痺れがあるばかり。
彼女は私の同級生で、部活動も同じ、帰る道の方向も同じだった。運動神経がよく、勉強もでき、絵を描くのも上手かった。努力を惜しまない人だった。
親友などと呼ぶほどには、互いの距離は近くもなかったけれど、下校時間にこっそり買って、二人で駐輪場の屋根に隠れて食べた、一つ百円ぽっちのアイスの味は、どうしてあれほど美味しかったのだろう。
ある冬の午後。下校時間に二人で帰路につき、他愛もない話をしながら並んで歩いていた。指先のかじかむ私の手を見て、彼女がそっと手を差し伸べた。温めてあげるよ、と。
繋いだ彼女の手の温かさが、私の冷たい手の血を絆す。与えられる優しさに心地よさを覚えながら、二人、いつもの帰り道を歩いていく。
ふと、
私は気づいた。彼女の手が冷たくなっていくことに。彼女は顔色ひとつ変えず、にこやかに私に話しかけている。私の手は、たしかに彼女の温もりを得たのに、それでも冷たいままだった。繋いだままの二人の手が、どちらも熱を失っていく。それでも、彼女は放そうとしなかったのに。
「もう大丈夫。」
私は彼女の手を放す。与えられるものもなく、奪い続ける浅ましさに、私自身が耐えられなかった。そう、と彼女が答えたのは、ちょうど二人の分かれ道の上。またね、また明日、そう互いに声をかけて分かれたら、その冬も、次の冬も、痺れる指を握りしめ、私は彼女と、二度と手を繋がなかった。
【友達の思い出】
7/7/2023, 2:18:35 AM