放浪カモメ

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他人に喜んで分け与える人。それが彼女の第一印象だった。
困っている人がいれば息をするように助け、ただ、そうするのが当然、というように老若男女問わず手を差し伸べていた。
そんな彼女を「偽善者」と陰口を叩く人間もいた。

なにかの拍子でふと尋ねてみたことがある。どうしてそんなに人の為に行動できるのか、と。
彼女はまるで苦手な野菜を話すかのように言った。
「誰かのためにじゃないと生きられないんだよね。自分のために生きられないの。」

少しうつむき寂しげに言葉を続けた。
「これも『偽善』なのかな……。」



/「誰かのためになるならば」

7/26/2023, 3:05:11 PM