シオン

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 その日の敵はあまりにも早い出現だった。より具体的に言うと夜の十二時をほんとに若干、十分ほど過ぎたあたりで、なんの感触もなかったのに急に結界にぶち込まれたのだ。
 家で結界の中に入るなんてこと一回もなかったから、もしかしたら全て戦いは幻想で、戻ってきたと思った時には部屋が大惨事だったらどうしよう、なんて密かに思っていたものの、そんなに強くなかった敵を倒して戻ってきたとき、あたしは床で倒れていて、部屋は特に何かが起こってはいなかった。
 とりあえずなんか猛烈に寒いので一旦リビングで温かいココアを啜りながら言った。
「それにしてもさ、早くない?」
『敵は十二時更新だからね』
「何その言い方。ゲームみたいじゃん」
 とはいえいい具合ではあるのかもしれない。それこそ本当にゲームのように、例えば四時更新とかだったら、きっとあたしは寝てる間に結界に引きずり込まれて死んでしまっていただろう。
『そんなことはないよ』
「…………!?」
 何も口には出てないはずなのにマスコットは不意にそう言ったので、あたしは口に含んだココアを勢いよく飲んでしまい、喉が焼けるように熱くなった。
『キミが結界に入った瞬間に意識は通常時まで覚醒する。じゃないと戦えないからね』
「……それは、怪物の意思?」
『いや。魔法少女の耐性の話さ』
「そっか」
 それはとってもいい事だ、と思った。あたしがあたし以外のせいにできるような状況で死ぬことはない、というのはいいんだと思う。何かのせいで死んじゃうなんてできれば避けたいことだから。
「それにしても……寒くない?」
『ボクには外気温を感じる器官は残念ながら無いのだけれど、そんなにかい?』
「人外だな…………。寒いよ、いつもより」
 寒くないでもちょうどいいでもなく、感じる器官が無いだなんてえらく人間じゃない回答に若干苦笑しながらカーテンを開けば雪が降っていた。
「……! 雪だ!!」
『ああ、だからじゃないかい。あまりにも外気温が低い時に雨が雪へと変わるんだろう?』
「そうだけどそんなことは最早どうでもいいよ! 雪だよ、雪!」

第七話 雪

1/8/2026, 12:18:55 AM