生まれつき、多くの障がいを持って産まれた私は、とても人間としての生活は送れませんでした。長くない一生涯を病室で過ごすことが確定していました。やがて、家族にも愛想をつかされ、見舞いに来る人は誰もいなくなりました。私は未来に希望を持つことがありませんでした。なぜ息をしているのかも分かりませんでした。
そんなある日、窓辺に1匹の鳥が落ちてきました。無知な私は鳥の名前が分からず、看護師さんに尋ねました。この鳥は雀と言うそうです。怪我をしていたので手当をしてあげたいと看護師に頼みました。看護師は眉をひそめ、少し困った表情を浮かべましたが、私の切実な態度を見て、渋々了承しました。しかし、菌があるといけないと言い、私が手当をすることは許諾してもらえませんでした。
私は体力が無いので、よく寝てばかりいました。半刻ほど寝ていたでしょうか、雀を手当した看護師が入ってきました。雀は片翼に包帯のようなものを巻かれて、よちよちと歩いていました。人間が怖いようで、私が手を伸ばすとビクビクと震え、机上でじっと固まってしまいました。看護師が、外に逃がしますと言いました。私は毎日この病室で、白い天井だけが友達でした。だから、こんなにも近くに生命体が存在していることに感動しました。私は看護師を必死に止めました。寂しいから、この病室で飼わせてくれと懇願しました。看護師が一瞬、哀れみと嫌悪の対象として私を見たのを、私は見逃しませんでした。看護師は許諾してくれました。
幸い、その雀は驚くほど鳴きませんでした。きっと喉に何らかの異常があるのだと思わせるほどに、鳴くことは1度もありませんでした。小さな病室で、2人の静かな生活が始まりました。私たちはお互いに欠陥があり、お互いに慰め合いながら生きました。雀の片翼は、傷が治っても飛べるようにはなりませんでした。それを知り、私は少し嬉く感じてしまったことは、胸の奥底にしまいました。
私の身体は日に日に弱っていきました。身体を動かすことがとても重労働に感じました。食欲が減り、身体はみるみるうちに痩せこけていきました。重い重石を乗せられているかのように、一日中眠っている日が多くなりました。
雀は、いつも私の傍に居ました。私を小さな身体で温めてくれました。
最期の日。とうとう私の元には、家族は訪れませんでした。その代わり、私の傍には雀がそっと寄り添ってくれていました。この小さな生命体と、人間では無い私。飛べない翼を持つもの同士、支え合って、精一杯生きてきました。短い人生。生まれた意味も分からない無意味なものでしたが、こんな私でも愛されたことをここに記しておきます。
11.11 飛べない翼
11/11/2024, 7:53:04 PM