学生時代に、有名な小説を読んだことがある。
生涯で一度は必ず読むべきだと聞いたから
この機会に読んでおこうと思った。
長く静かな小説で、何か激しい展開はなく
穏やかな海に浮かぶ浮き輪のように
少しだけぷかぷか感情が浮き沈みする話が長く続いた。
おそらく、学生だった私のほうが
その小説よりも
喜怒哀楽の豊かな毎日を送っていたと思う。
私はときどき思い出しては、続きを読んだり
読まなかったりして物語を紡いだ。
そして、小説の最後のページが訪れた。
その小説の最後には、
落胆と喜びが同時に押し寄せるような
バッドエンドでもハッピーエンドでもあるような
死と生とが訪れたような文章が締めくくられていた。
私はしばらく呆然として、本を閉じた。
小説が終わったことで、
はじめて何かが始まった気がして、思わず目を閉じた。
4/18/2025, 10:28:31 AM