眼の前には、たくさんの写真が入ったアルバムがある
旅先で撮ったもの、イベントの記念写真や家族写真
たくさんの思い出の証だ
写真を見ると、忘れていた記憶が昨日のように思い出される
学校の入学式、就職の時、結婚、子供が生まれたとき
こんなにも大切なことを、なぜ忘れていたのだろうか。
分かっている
若い頃の私がこんな思い出は不必要だと決めてかかったからだ
だが、全てを捨てたら俺には何も残らなかった
そして絶望して―
「思い出されましたか」
眼の前の天使は言う
ああ、思い出した
俺は死んだんだな
「はい、あの世に連れて行く前にすべてを思い出して貰う必要がありました」
そうか
俺は地獄行きだろうな
「それはお答えできません。主がお決めになることです」
そうか
まあ、いい
それで一つ聞きたいことがある
「何でしょう」
このアルバムは持っていけるのか
「はい、構いません。そのつもりで持ってきました」
なら、良かった
これさえあれば地獄も怖くない
11/19/2023, 8:02:27 AM