お題「距離」
君に手を伸ばしても、届かない。
彼女の周りには、いつも人が散る。
僕達は何万kmの距離が離れている星のようなものだ。
見てるだけでも満足してしまう存在。
「ふふっ、面白いね。」
図書委員の僕の元に訪れた彼女は、星についての本を持っていた。
星が好きだと思った僕はペラペラと色々話してしまった。
普段は暗いくせに、空の事だけは流暢に語る僕を見て彼女が笑う。
その時、初めて太陽に照らされる月の気持ちが分かった。
「何で星の本を借りようと思ったの?」
突然、静かになった図書室。
僕と彼女のたった二人だけの図書室。
彼女の顔を見れば、頬が紅く染まっていた。
そ、それはね?なんて言葉が詰まってしまっている。
「貴方が好きって聞いたから…見てみようと思って。」
「そ、そっか…。」
彼女は僕のことが好きなのかもしれない。
そんな期待をしてしまい、気まずくなって言葉が詰まる。
僕は、オススメの本を貸すことしか出来ないのだった。
彼女から告白されるまで、あと…。
12/1/2022, 10:39:19 AM