微かな潮の匂いが、ふわりと鼻に届く。
チリンチリンという音と共に、整った顔立ちの君がカフェに入ってきた。
その視線は僕に向いている。
いくつかの参考書を脇に抱え、白いワンピースを翻す姿に、僕は少し見惚れてしまう。
僕の座っていた席に、ドサリと荷物を置くと、結露して机を濡らすカフェオレに君は口をつけた。
言葉を交わさず、黙々と夏休みの課題に取り掛かる二人の時間は、コーヒー豆の香りに彩られる。
しばらくそのままであったが、勉強もそこそこにして切り上げると、君と僕でカフェ沿いの浜辺に出た。
辺りは夏の盛りだというのに、ちらほらとしか人影が見えなかった。
サクッサクッと音のなる砂浜を蹴ると、そっと君の手を取った。
海風が吹いた瞬間、君の頬がほんのりと赤く染まった気がした。
僕らはしばらく、そのままでいた。
どこかから夏の始まりを告げる音がした。
#夏の気配
6/28/2025, 1:00:58 PM