流れ着いたメッセージボトル

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「!?わっ…、テムズ?」

ぼーっと窓枠に頬杖ついて外を眺めていた午後。
頭の上に相棒フクロウであるテムズが乗っかってきた。

体の大きいこのフクロウはあろうことか頭の上で腹ばいのように丸まると、そのまま羽を横に広げバッサバッサと頭を包むように羽ばたいた。

耳元で羽音が大きく響く。

「こら、ちょっ、何やって…!」
「ホーッ!ホホーッ!」

慌てて腕を掲げると、テムズは羽ばたくのをやめて腕に飛び移った。

「…あーあ、もう頭ボサボサ……何やってんのさ」

ぐしゃぐしゃになった髪を片手で整えつつ、腕に止まっている相棒に不満を漏らす。
普段は大人しいのに一体何だと言うのだろうか。

「ピィ、ピィ。ホホーッ。」

するとテムズもどこか不満げにジト目でこちらを見てきた。
本当になんだと言うのだ。

しばらく見つめ合っていた次の瞬間、テムズは袖を掴むようにしてふわりと羽ばたいた。
その場で空中に留まりつつ、こちらと窓の外をかわるがわる見るテムズ。

「な、……なに、外に出ろって?」
「ピィ!」

まるでそうだと言わんばかりに返事される。
どうやらこの相棒は僕を外に出したいらしい。
やれやれ仕方ないな、と相棒の言う通り箒を掴んだ。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「…………あのさ、自分で飛ばないの?」
「ピィ」

箒で空に舞い上がると一緒に飛ぶのかと思いきや、相棒は肩に止まって優雅に目を細め、風を感じていた。

ほんと何がしたかったの君は、と独りごちるように呟くも、肩の上の相棒は素知らぬ顔。
そのままホグワーツ城の周りをゆったり箒で周回していく。

しばらくすると、ふと風が心地良いと思った。
頬にもふもふと当たるフクロウの羽もくすぐったいが嫌じゃない。
何となく見ていた眼下の景色もなんだかより美しく見える気がする。


「…テムズ、もしかして君、気分転換させようとしてくれた?」

最近、課題や実習に追われて息抜きという息抜きが出来ていなかった。
聡い相棒はそんな自分を見かねたのかもしれない。
ちらりと肩に視線を送りつつ尋ねてみる。

フクロウは応えなかったが、もそもそとその羽根を揺らしてみせたのだった。



#揺れる羽根 HPMA side S.

10/25/2025, 1:02:08 PM