たぬぐん

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「Midnight Blue」

草木も眠る丑三つ時、私は鍵をかけて家を出る。

家に帰ってきた時は、まだ人や車が行き交っていた目の前の道も、すっかり静まり返っている。
聞こえてくるのは、虫の鳴く音くらいだ。

夜の小さなオーケストラに耳を傾けながら、私は真夜中の暗闇の中、一歩一歩足を進める。

真っ暗ではあるが、所々に街灯があり、街のある方角の空は、薄ら明かりを放っている。

真夜中の暗闇を想起させる色を、ミッドナイトブルーというらしい。
完全な真っ暗闇ではなく、淡い青色を含んだ黒に近い色だそうだ。

きっと今の私の心境を色で表すと、そんな感じの色になる気がする。

生きる希望を無くすまで絶望してはいないが、決して未来に希望を抱いてるわけでもない。
黒に染まりきる勇気は無く、光り輝くには程遠い。中途半端であるが、中の中ではなく下の中。

それが今の私だ。

今もこうしてトラブルで会社に呼び出され、久しぶりに帰宅した我が家を、三時間で出ることになった。

まあ、別に構わない。家にいても寝る以外にやる事は無い。

私は今何をしているのだろうか。
最後に前向きに考えて行動したのはいつだったか。
最後に気持ちが踊ったのはいつだったか。

もう気持ちが沈んでいる自覚も無くなってきた。
この状態が通常だから。

だが、私の辛うじて残ってる淡い青色の部分が叫んでいるんだ。

だれか、私を暗闇から連れ出してと。

8/22/2025, 12:17:06 PM