夏。
暑い夏。
「ねえ、春(はる)ちゃん」
「……うっ…ゲホッゲホッ」
春は泣いて。
「本当は」
私は笑った。
「ちょっと!!こんな事した人は誰ですか!?中学生にもなって…」
先生のお説教は長い。
その分授業が潰れるから迷惑だ。
「あの、先生」
隣から声がした。
「今は話の途中です」
「いえ、その、私見たんです」
如月 桜(きさらぎ さくら)。
通称『真面目ちゃん』
桜は優しくて皆に好かれてる。
だけど裏では、真面目ちゃんって呼ばれてる。
「ちっ、チクリ魔が」
そうそう、チクリ魔とも。
「犯人を見たのですか?」
「いえ、昨日、教室で“春さん”が何かやっていました。ずいぶん遅い時間までいたと思います」
「如月さんは何を?」
「算数でどうしてもわからないところがあって、時間がかかってしまいました。教えてくださったのは鈴木先生ですので聞いてみてください」
「…わかりました、百瀬(ももせ)さん!本当ですか?」
春が席を立つ。
ちらっと目配せしてきたけど、知らないフリをした。
面倒くさい。
「……違います、放課後はすぐに帰宅しました」
「誰か、放課後に春さんの姿を見た人はいますか?」
教室がざわつく。
いるはずがない。
春は確かに放課後はすぐに帰宅した。
私と一緒に。
でも、人気の無い裏道を通ったから目撃者がいるはずがない。
「私、雫(しずく)ちゃんと一緒に帰りました」
「歌川(うたがわ)さんと?」
おっと、次は私かぁ。
「確かに一緒に帰宅しましたが、途中までです。私と別れてから直ぐに戻ったのなら可能性はあります」
「雫ちゃん?」
春は少し涙目になっていた。
「百瀬さん、放課後少し残ってもらえますか?」
「でも、私やってない」
「でもじゃないです。貴方が学校の備品を壊したのであれば、大変な事ですよ」
春がクルッと顔だけ動かして私を見た。
「ねぇ、雫ちゃん。なんで庇ってくれないの?」
「百瀬さん、こっちを見なさい」
「先生、そもそも如月ちゃんがでっちあげた可能性も無い訳じゃないですよね」
「はぁ、いいですか?貴方は普段から信用できないことの方が多いんですよ。如月さんはあなたとは違って信頼していますから」
私は席を立った。
「先生、むしろ如月さんは信用できないと思いますけど。先生が如月さんを信用しているのって普段からチクっているからでしょ?」
ここで、如月が立った。
「チクってるって何?報告してるだけなんだけど。私は普段からあなたとは違って先生の手伝いだってしてる」
「あのさぁ、報告ならありのままのことを話してくれない?この前、先生に私が隣のクラスの子をいじめてるって言ったでしょ」
私が言うと、如月は「なんで知ってるの?」とでもいいたそうに目を見開いた。
「なっ」
「どうしてそんな事言ったの?あの子と私が仲いいの知ってるよね」
ー声が枯れるまでー
保存で、また書きます。
10/21/2024, 12:19:31 PM