彼とわたしと

Open App

       “胸の鼓動”が高鳴る

 それは、彼に見つめられた時。逆に、彼のことを廊下で見つけた時。彼に苗字を呼ばれた時。もっとすごいのは、下の名前を呼ばれた時。そして何より、わたしと会話をしてくださっている時。

 きっと他にもあるのだろうけれど、まだそんな関係にもなれていないのだ。時々、今のような教師と生徒の関係でなければ、もっと近い関係になれていたかもしれないのに、と悲しくなる時がある。そこで、もしもわたしたちの年齢が近くて同僚だったとしたらどうだろう?本当にお近付きになれただろうか?いいや、きっとそれは間違っている。大人としての秩序と距離感を人より何倍も気に掛けている彼なのだ、すんなり仲良くなれる訳がない。

 そう考えるとやっぱり、今教師と生徒なのは奇跡なんだなと痛感する。彼からするとこの好意は邪魔でしかないし、そもそも恋ではなくただの憧れに過ぎないのかもしれない。けれど、この“胸の高鳴り”をその理由にするにはまだ、私たちには早すぎる。

9/8/2024, 10:12:14 AM