「どこ行くの。」
「秘密。」
「何それ。別に興味無いし。」
「じゃあ聞くなよ。」
ばしゃり。氷が溶けてほとんど水になったコーヒーが
あの人に買ってもらったコートの色を変えた。
ばたん。近所迷惑な音が鳴り響いて、
僕は静かな夜を歩いた。
「…これはまた、良い男に磨きがかかったな。」
「でしょ。」
冷たいドアを開けて僕を迎える声、目、手、そして唇。
「こら、私まで濡れる。」
「いいじゃん。濡れてよ。」
「…これ以上濡れたらふやけてしまうよ。」
「もうふやけてるよ、その顔。」
ぼふん。
ふかふかのひとつのベッドに
ふたつの息が沈んだ。
秘密の場所
3/8/2025, 2:47:35 PM