「あなたは誰?」
夕焼けに反射して貴方が誰だか分からないの。
目を凝らしながらまだ遠くにいる彼を見つめる。
「俺のこと忘れたのか?悲しいぞ、と」
その口調、私の知る限りでは一人しかいない。
でもそんなことはありえない。
だって私と貴方は住む世界が違うから。
一歩ずつ近づいてくる彼に戸惑いを隠せない。
「どうして…私の事、知ってるの?」
「知ってるぞ、と。お前のことも、お前の住む世界のことも」
目の前に来たあなたは恋焦がれてやまない人
「ここの方がきっとお前は幸せになれる。分かってて、それでも迎えに来た。」
「迎えにって…どうゆう」
太陽が沈む。
眩しかった景色も落ち着いて彼の綺麗な髪がよく見えるようになった。
「この陽が沈む前に俺の手を取ってくれ。」
有無を言わさない表情で見つめてくる彼。
「この場所は俺からはお前に触れられないんだぞ、と」
儚げに笑う彼に時間がないというのに見惚れてしまった。
そう言えば聞いた事がある夕焼けで薄暗くなると色んな事が曖昧になるって。空を見ると明るいような、暗いような雲ひとつなく空を見ているのかもあいまいだ。
今決めないと、きっと永遠に後悔する。
彼の手を取らない選択肢はない。
彼に近づき恐る恐る手を重ねると手を引かれ腕の中へ。
「間に合ったぞ、と」
でももう帰れもしないぞ、と少し申し訳なさそうに言う彼に返事をするように抱きしめ返した。
あいまいだった空はいつの間にか一面の星空に変わっていた。
-あいまいな空-
6/14/2024, 4:10:54 PM