鶴づれ

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太陽


 私の前の席の男の子は、太陽みたいな人。

 いつも笑顔で、元気で、見ているこっちまで力をもらえるような人。私みたいな陰キャにも話しかけてくれて…、なんというか、本当にみんなから好かれる人っているんだな、って感じ。

 叶わないだろうなってわかってても…。私は彼が好き。
 でも、告白なんてする勇気どころか、私から話しかけることすらできないんだよね…。これだから陰キャは。

 そのまま、ずるずると迎えた夏休み。
 彼に会えないまま八月になった。
 いつものようにスマホでタブレットで通話アプリとゲームのアプリを同時に起動させる。

「やっほ〜。お疲れ様」
 友達主催のボイスチャットに、約束の時間通りに入ると、先にいた仲間が暖かく迎えてくれた。
 今日はクラスのゲーム好きが集まってオンラインゲームをする日。夏休みは彼に会えないけれど…、こうして友達と気兼ねなくゲームができるのがいいところだ。
 ぱらぱらといつものメンツが集まってきた頃。
 ポロン。見慣れないアイコンと名前の人が入ってきた。

「わりぃー!遅くなった!」
 この声…、彼だ!幻聴じゃない!
「嘘、いつの間に!?」
 思わず大声を出すと、彼のいつもの太陽みたいな笑い声が聞こえた。
「へへっ。なんか楽しそうだから、入れてもらったんだよ。今日まで内緒にして、入った時驚かせてやろうと思ってさ。ナイスリアクション!」

 画面にむかってグッドサインをする彼が目に浮かぶ。
 みんなの、びっくりした、とか、いらっしゃい、の声が、どこか遠くに聞こえた。

 私の千里の恋が足一個分、進んだような気がするよ!

8/6/2023, 1:22:12 PM