イオリ

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誰にも言えない秘密

 目の前の空を魚が泳いでいる。種類は様々。名前は知らない。大きい時もあるし小さい時もある。一匹の時もあるし、群れの時もある。

 幻覚だ。僕にだけ見える。

 いつからかは忘れた。理由も知らない。見える日もあるし、ずっと見えないこともある。

 突然現れたとしても、ああ、そうかと思うだけ。慣れた。

 ただ、唯一、戸惑うことがある。巨大な一匹のクジラ。彼が現れると、必ず死に出会う。最初は祖父、十年後に祖母。その翌年、目の前で交通事故があった。知らない人だった。

 彼はゆったりと進む。何にも動じず、ゆったりと。

 見えるのは全体像だ。だから、かなり距離はある。

 が、ある不思議な確信がある。

 目だ。彼は僕を見ている。離れているから実際には見えないが、確信がある。視線を感じる。

 なぜ、なぜ僕なのだろう。なぜ僕を見るのだろう。

 
 6月6日。7時。
 
 晴天の東の空を、巨大な尾を揺らしながら彼が泳いでいく。

6/5/2024, 10:42:46 PM