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当たり前が瓦解する時とはどのような時だろう。
受験で失敗する時?就活で失敗する時?
会社が倒産した時?自己破産した時?
どれもこれも違う。
確かに大変だけれど生きているという当たり前がある。死という不幸の上限がある。どれだけ苦しくとも死ねば楽になれる。俺も数秒まではそう思っていた。
俺は生きるのが苦しかった。前で挙げた例全てが俺だ。だから生きるのを諦めて死んだというわけだ。
だがこんな展開、俺の人生の設計図に載っていなかった。死んだ瞬間景色が暗転して気づいたら牢獄の中にガリヒョロの爺と「2人ぼっち」という何とも稀有な状況に陥っている。そのガリヒョロの爺は餓鬼と言って昔からここ「地獄」で囚人をやっているらしい。
対して悪いことをしていなかった俺は疑問に思って餓鬼に聞いたら「まあ明日、閻魔裁判があるから。」と相手にされなかった。その後、餓鬼と生前の話をしていたらすっかり日が暮れてしまって俺の地獄一日目が終了した。
翌日、目を覚ますと看守が檻の前にいて、俺は裁判所みたいなところに連れて行かれた。どうやら昨日の餓鬼の言っていたことは本当らしい。想像通りの閻魔大王が出てきて閻魔裁判が始まった。裁判と言ってもただの罪人の罪状を無機質に言い渡すだけの報告会みたいなものだけれど。 俺の場合は日頃の行いは違反しなかったが、最後の自殺がよろしくなかったらしい。人とは地獄や天国が管理しているものであってそれを勝手に壊した損害として懲役50000年らしい。全く「バカみたい」だよな。牢屋に戻ると餓鬼が、出迎えてくれた。餓鬼は俺の懲役年数を聞くとガハハと笑いまあそんなもんだよ。と励ましてくれた。こうして2日目が終わった。
朝になると自然に起きる癖は変わらない。餓鬼はまだ寝ているから起こさないように簡単なストレッチをする。けれど餓鬼はその脅威的な感覚で、俺が起きていると起きてしまうのだ。餓鬼は自分の事をあまり語ろうとしない。看守に聞いてもさあ?とすっとぼけられる。一つわかることは、遥か昔からここにいたということ。それ以外はてんで分からなかった。でも今日、俺は核心に触れるものを見つけた。餓鬼はいつも襤褸を被っているせいで額など見えないのだが今日はたまたま見ることができた。そこには角が生えていた。
つまり餓鬼は人間ではなく鬼とかそっち方面の存在などでは無いかと結論付けられた。そう思い餓鬼を問い詰めると少し間を置いて餓鬼は「分かった。話そう。」と言った。聞いた話を簡潔にまとめると昔餓鬼は地獄の警ら隊に属していたそうだ。でもある日空腹を感じて大事に置いてある珠みたいなものを食べてしまって今に至ると語った。この角もその時に生えたものだそう。その後、自分も全てを曝け出して俺たちは親友になった。死が平穏だと思っていたけど地獄でも何気ない平穏を手に入れられる。

3/31/2024, 12:03:32 PM