駒月

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「ああ……!これが食べ放題だなんて!」

 彼女──幼馴染みは歓喜に打ち震えていた。
 色とりどりの花……に囲まれたホテルビュッフェの会場。花に負けないくらいのカラフルで鮮やかなフルーツ、スイーツが並べられている。

「ここ、高いんじゃないの?」
「誕生日だからいいよ。君、ここで思いきり食べまくりたいって言ってただろう?」
「言ったけど!」
「たまには格好つけさせてくれ」

 ウインクをすると気障だの何だの言われたが気にしない。
 受付をして中に入る。彼女はすぐ手に皿を持ちスイーツコーナーへ向かった。料理コーナーはスルーされた模様。
 そんなに喜ぶならもっと早く──付き合ってる時に来ればよかったかな、とぼんやり思う。
 今はお互いフリーで、幼馴染み付き合いをしているだけだ。彼女はどうだか知らないが、俺は彼女に対しては恋愛より親愛の情が強いらしい。
 彼女に合わせるように取ったケーキを口に運ぶ。上品な甘さに思わず笑みがこぼれた。

「おいしいね」
「ん」

 彼氏として、彼女として。または男らしく、女らしく……そんなことを気にせず食事できるのは気楽で心地良いものだと、改めて思う。やはり今日来てよかった。

「クリーム、ついてるよ」

 彼女の口の端のクリームを指で拭った。赤くなる顔。今は俺だけのものだ。少し怒りながら照れる彼女。

「何にやついてんの?」
「別に?子供みたいで可愛らしいなと思っただけだよ」
「ばか」

 こんなやりとりを続けられるのなら、今のままでもいいのかもしれないね。
 



【色とりどり】

1/9/2024, 5:02:00 AM