みかんの思い出
丘の上から林檎が転がってきた。思わず手が伸びたがすんでのところで気がつく。いや、あれは人だ。元恋人だ。ごろごろと無様に転がり落ちていく光景が面白くてけたけたと笑ってしまった。ざまぁみろ!私を振った罰だ!と思ったがあれ?違う。あれは人なんかじゃない、粘土の模型だ。確か小学生6年生の時に作らされた作品。題は将来の自分!だったっけ。大層なことに、私の模型は聴診器を首に引っ提げて、何やら顔色の悪い人物の問診をしている。嗚呼懐かしい。本気で医師を志していた時期もあったっけ。敗れた夢は拾わずにそっと放っておくことにした。と思っていたら、やはりあれは粘土模型なんかじゃなかった。みかんだ……!どこからどう見てもみかんである!今度は躊躇わずに拾った。お腹がすいていたからだ。
みかんの思い出なんかあっただろうか?
12/29/2024, 12:09:48 PM